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マガツノート

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NOVEL

SHORT STORY

<バレンタインスペシャルSS>愛のチョコレート品評会

Character
幸村 佐助 才蔵 遠州

「ヒヨコ! コウヘーな審査しなかったらどうなるかわかってるんだろーな?」
「第三者の立場からしっかりと判断してくださいね、ヒヨコ様♪」

 このオレ、遠州が『突撃! ヒヨコリポーター!』のバレンタイン企画でインタビューをするため六道閹を訪れると、そこでは『チョコレート品評会』なるものが開催されようとしていました。

「ええと……、すみません。そもそもどうして品評会を?」

「バレンタインって、好きな人に愛を押し付ける風習があるんですよね♡ そのために、昔の方々はチョコを贈っていたとか……」
「ってことで、ユキに手作りチョコをあげようってなって、そんでいろいろあって、すげーチョコを作った方が、今日一日ユキを独り占めできるってことになったんだ!」
「私としては、『触れ愛♡』で気持ちを伝えるのも好きなんですが……、たまにはこういうのも悪くないですしね♪ ああ……、勝ったらゆきとあんなことやこんなことを……♡」
「勝つのはオレだし! 久々にユキと本気のバトルするんだ~♪」

「というわけなんだ、ヒヨコ。悪いが、彼らに協力してあげて欲しい」

「……わ、わかりました、幸村さん。しっかり審査させていただきますね! はい!」

    ◇

「じゃあ、まずはオレのから! じゃじゃーん! 名付けて『墓チョコケーキ!』」

 佐助さんが出したお墓の形にしたケーキの周りには、たくさんの……“死体”の写真が散りばめられていました。

(び、びっくりした……。でも、暗殺稼業を営んでいる六道閹のチョコなら、これくらいが普通……なのかも……?)

「ユキに渡すなら、ユキの好きなものを入れたいじゃん? だから、いつも暗殺のときに撮ってる動画を切り抜いたんだ! いろんなヤツの死に様見ながら食えるチョコとか、オレすげーいいこと思いついたよな!」
「フフフ。ありがとう、佐助。君らしくて、素晴らしいアイデアだ。こんなチョコレートは初めて見たよ」
「でしょでしょ! えへへ、ユキなら気に入ってくれると思ったんだ~」
「美しい死を追い求めるゆきにこのチョコとは……、佐助もなかなかやりますね。ですが……、私のチョコも見てください……♪」

 そう言った才蔵さんが運んできたのは――、

「す、すごい……」
 才蔵さんの形をした、等身大チョコでした。……しかも、裸。

「んふふ。ゆき、じっくりと見てください♡ 私のカラダで型を取ったんです。……ゆきへどうやって愛を伝えるか考えたときに、やはり私のすべてで伝えるのがいいという結論になって……」
「才蔵、ありがとう。君の気持ちが伝わってくる素敵なチョコレートだ。……どこから食べるのがいいか、少々迷ってしまいそうだがね」
「どうぞ、ゆきのお好きな部位から……♡ 食べている姿、隣で見ていても?」

「ってことで、ユキ! ヒヨコ! 採点、よろしくな!」
「100点満点でつけてくださいね」

「そうでした! 採点、採点っと……」

 2人のチョコのクオリティに感心して審査のことをすっかり忘れていたオレは、もう一度チョコを眺めました。

(うーん……。見た目はどうあれ、どちらも幸村さんへの気持ちは十分過ぎるくらい伝わって来るし、難しいな……。でも、佐助さんと才蔵さん相手に下手なことすると命の危険もあるし……、そうだ! ここは――)

「ええーー!? 2人とも、オレとサイゾーに100点つけたの!?」
「どちらも甲乙つけがたいほどに素敵でしたので! はい!」
「困りましたねぇ。これでは私も佐助も、優勝賞品であるゆきとの時間がもらえないことになってしまいます」
「ユキはともかく……ヒヨコ! なんでお前まで同じ点数つけるんだよ!!」
「そうですよ、ヒヨコ様。これでは審査員をお願いした意味がありません……」

(うーん。まさか幸村さんも100点を出すとは思わなかったな……。いや、家族思いの幸村さんは優劣をつけないのか)

「ヒヨコ様、再審査をお願いします」
「そうだそうだ!」

「そう言われましても……。本当にどちらのチョコも素晴らしくて、オレなんかにはとても選べなくて――」
「じゃ、選べるようにしてやるよ。……足がいい? 手がいい?」
「ヒヨコ様、あなたの抵抗値……実は前々から気になっていたんです……♪」

(これ、選んでも選ばなくても命がないやつだ……!!)

 佐助さんと才蔵さんに迫られ困ったオレは、頭をフル回転させてこの状況から逃れる手を考えました。しかし、良い手は思いつきません。

そんな時でした、救世主が現れたのは――。

「佐助、才蔵。私のチョコレートも審査してくれないかな。君達へ、私からの感謝の気持ちだ。いつもありがとう」

 そう言うと幸村さんは、上品な赤い箱を2人に差し出しました。

「君たちのチョコに比べたら地味かもしれないが、その分、愛はたくさん込めたからね」

(幸村さん! ……おふたりの反応は??)

「ユキ~~ありがとう! 大好き!!」
「ゆき、私も大好きです♡ ゆきのチョコは100万点です」
「違うし! ユキのチョコは100億点だし!」
「フフ、それでは私が優勝してしまうが、いいのかい?」
「うん! だって、ユキのチョコが世界一に決まってるじゃん!」
「ええ、ゆきの愛には誰も勝てませんから♪」

(ふぅ~、なんとか助かったみたいだ。危なかったぁ……)

 幸村さんの機転と大きな愛により、九死に一生を得たオレだったのでした。